2019年3月11日月曜日

感性

我々の時代は以前よりも多くの手段,多くの知識,多くの優れた技術を持ちながら,過去のあらゆる時代よりも不幸な時代として,その波間に漂うているのである。(オルテガ・イ・ガセット)


ドラマ「3年A組」終了。他のドラマも終了する時期ですが,このドラマはなかなか興味深かった。

別段解説の必要もないでしょうが,「匿名で自分を守りつつ,コメントをネットに垂れ流す思考停止あるいは配慮停止人間が横行してしまっている社会への問題提起」といった作品だと思います。

面白かった。

面白かったんだけど,同時に空しい作品でもあることは間違いないでしょう。菅田将暉さんが熱演した教員が主張していることは,学校教育で「ちゃんと考えよう」とどの先生も言っていることと何ら変わりません。「Let's think!」です。同じ。

「あんな先生,いたらよかった」

そういうふうに感想を持つ人もいるとは思いますが,あの先生があんな事件を起こさないと大事なことにすら気づけない愚鈍さも同時に描かれている。このドラマによって,自己を振り返り,行動が品よく変容するネットユーザが溢れかえるといいなあと思いますが,「事件で何かが変わるでもなく…」というエンディングと同じ状態を辿ることになるのでしょう。つまり,一時のfadで終わるでしょう。

同じ時期にNHKの「100分で名著」でオルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』が取り扱われていたことは何とも皮肉。