2013年2月7日木曜日

品行

その人の行く末は顔に現れている。(岡野 宏)


心理学では性格について様々な考えがあるのだけども,僕は「性格は行動傾向」だとあっさりと思っています。その人が採っている行動を直接見ることができれば,そういう行動を採らせる「心」の存在が仮定されて,それが一般に性格と呼ばれているのだ,という安直な理解です。(もっと言うと,質問紙は行動傾向との対応は弱いと考えています。)

僕の捉え方は,例えば,東野圭吾の「探偵ガリレオ」の主人公 湯川が第1話「燃える」で見せた,犯人の性格の捉え方に似ています。犯人はレーザーをいろいろな箇所で反射させ,ターゲットに命中させるという犯行を実行するのですが,このレーザーを命中させる調整がかなり大変で,同じことを湯川は実験を繰り返して,その方法で被害者と同じ致命傷を与えることができるかを確認しようとします。はたから見れば,ただの科学バカのようにも思える行動ですが,この一連の実験から,この方法で殺人を行うことが可能であることと同時に,「執念深い」犯人像を描き出します。

まあ,こういう類の判断です。大した理屈はここにはありません。


人の性格を知るのに最も理想的なのは行動を見ることなのですが,つきっきりで観察するわけにもいかないので,行動を直接見ないで済む「代用品」が必要になってきます。

僕の場合,それは「顔」です。顔を見れば「おおよそこういう人じゃないかな?」という推測ができます。「できているつもり」というのが正確かもしれませんが,主観的には当たる確率の方がハズれる確率よりも高いと思います。(ハズれることがあるというのがミソ。質問紙は回答者が正直に答えてくれたらハズれることはないです。「自分の行動を客観視できて,それを正確に答えられたら」です。)

経験主義的な議論は嫌いですが,こういう考えは経験的に培ってきたものだと思います。顔でそれなりの性格にあたりをつけるんです。(こういうことは恐らく多くの人もしているのではないかと思います。例えば,道を尋ねる時,「コレモン」のように見える人には声をかけないですよね? 但し,美形とか可愛い顔が良い性格という関係はないです。) 予想した性格よりもよい行動が観察されたら「いいハズレ」と考えます。この逆で「悪いハズレ」もあります。


しかし,個人的な経験では,「言葉遣いの悪さ」と「権威主義的な性格」,「自分に甘い性格」はそれほどハズれたということはなかったと思います。つまり,ある種の顔立ちとこれらの行動傾向はかなりバラツキが小さいということです。顔も筋肉の集合体だから,使えば発達するし,使わなければ衰退します。目つきを一つ取っても,その時点までの行動履歴が反映されるはずです。

また,これも偏った認識かもしれないですが,「挨拶しない」というのも目つきに現れるように思います。これは恥ずかしがり屋のために「挨拶できない」というのとは違い,意図的に行われる行動なので,かなりネガティブな印象になります。そして,先に書いたように,顔から性格を推測するのは,その原理が分かっていなくても,多くの人が知らず知らずのうちに行っていることです。


で,結局何が言いたいのかというと,それが,今回の「名言」につながります。職業柄,僕よりも断然若い学生を見るわけですが,普段の品行が顔に反映されていること,つまり本人が自分の顔を理解していない,もっと言うと行動履歴(=性格)が反映されることを理解していないから,就職活動の際,特に面接で損をする可能性に気づいていない,ということです。面接ではその場の応対だけでなく顔が見られるし,面接官はまさに人柄を見ようとします。つまり,「その場で取り繕って,まじめに見せているだけ」かどうかを,顔と行動で判断される可能性も否定できません。

就職試験に必要な知識は短期間でも何とかなるかもしれませんが,顔は長期にわたる行動傾向を反映するので,面接間際でどうこうなるものではないということです。就職活動を始める方,あるいはまだ就職活動には早い大学1,2年生は普段からの「品行方正」を心がけるのがよいと思います。また,就職に失敗した方は,就職試験対策の見直しはもちろん「品行」の見直しもする価値はあるかもしれません。もちろん,採用人数のために,ギリギリのところで不採用だったのかもしれませんが,「ギリギリ」でなくなる対策としても「品行」を無視しない方が良いかと思います。